活動報告

魂に触れるとは(作品解説有)

小林 広恵 個展「魂に触れる前に」1月8日〜30日GALLERY APA MainRoom

足をお運びいただいた方、気にかけてくださった方、ありがとうございました。

(写真)「魂に触れる前に」2021 油彩・木材

さて、個展タイトル「魂に触れる」とは?というご質問を多く受けまして、長文になりますがご説明したいと思います。あくまで作品やタイトルはどのように受け止めていただいても良いかとおもいますので、自分の感じている事はこんなことでしたよ〜。というものです。必ずしもこうでなきゃいけない、みたいなものではありません。

「魂に触れる」とは、人の一言でパッと明るく軽い気持ちになったり、人の一言に傷ついて落ち込んだりします。そういった一言をかけられた時、魂に触れられた、またはそういった一言をかけた時その人の表情をみて魂に触れたのだと思います。

また、植物を育てていると水やりをするのですが、あげすぎても根腐れして枯れたりあげなさすぎてしおれたり季節によってもあげる頻度や時間を変えたりします。ずっと気にかけてあげることで適切なタイミングで必要な分だけあげる事ができます。

これは人も同じで、ちゃんと顔をみていなければ正論を言いすぎたり、甘やかしすぎたりします。またずっと気にかけていれば必要なときにその人を手助けすることができます。

そんな水やりのような愛情のことを制作中は考えていました。

作品「魂に触れる前に」は鏡を取り付け、人が映り込むようにしました。私は植物を描いていて何が一番面白いかというと、植物の生え方です。多種多様の植物が同じ場所に同時期に生えていて、葉のつき方、交互に葉が生えていたりギザギザだったり葉の表面に密に毛が生えていたり、まっすぐだったりツルだったり、複雑に絡み合って生息しています。それはまた人間や人間関係、また縁のようなものとリンクして考えていました。この絡み合い美しさをなしている植物の存在と時間とリンクする映り込む人の存在を表現したかったのだと思います。魂に触れる前に立ち止まって愛情の事を思い出したい。そんな感じです。

 

上の写真は「春にいる」(油彩・円形キャンバス・2022)というシリーズです。これは街路樹に雪柳とボケと黄色い花の枝が複雑に絡み合っていて、ピンクと白と黄色の花が一緒に咲いていて春らしくて、でも共存がなんとも面白いものでした。雪柳の小さな葉と、ボケの大きめのツヤっとした葉、そして花だけの枝。そのあり方が、私はとても興味深いのです。

 

Watering to you (油彩・エンジュ・2021)こちらはそのまま「君に水やり」というタイトルです。豊田市の花遊亭さんのお庭を描いたものです。野ばらやまさに多種多様の花たちをスタッフさんがお手入れを欠かさず作り上げています。お庭自体が作品なのでそれを描くのもどうかと思ったのですが、「お庭を部屋に連れて行く」という絵画の役割や、持ち運べる財産にするのが絵画という持論をもって作品にさせていただきました。手入れを欠かさない、って仕事かもしれませんがすごい愛情だとも思うのです。

 

こちらは「誰にも知られる前の魂」(油彩・エンジュ・2021)です。とても横長なエンジュの小口に描いています。

私はこれまで沢山の人に出会ってきたからこそ作品が変化し広がっていったと思っています。一人で絵だけを描いて美術の世界にいたら、Fサイズのキャンバスに描いて公募展に応募して終わり、変形のカタチに描くということはしなかったと思います。音楽の人に出会ってリズムの事を深めたり写真やダンサーの人に出会っては遊びながら表現を楽しむ事を知り、陶器の人とガス窯を借りたり、、そうやって作品の幅も広がって行きました。自分の心がワクワクするところ、を大事に色んなものに描くようになりました。

しかしそうやって人と出会う前も決して世界が狭かった訳でもありません。若さもあり精神的に幼かったけれどそれも自分です。両方あって自分なのですが、コロナ禍になり一人の時間が増えたことでふと思い出し、出会った人に感謝しつつ、その頃の魂について考えていたのです。

雨の雫、濡れた植物を描いていて、どこかリズミカルで雨も良いとおもう1日。切なくて暖かくて懐かしい。誰にも知られる前の魂はそんな感じです。

 

「離れ離れにならないで」(油彩・エンジュ・2022)

こちらもタイトルの意味を聞かれます。タイトルはほぼ後付けで考えるのが難しいのですが、、これもコロナ禍でほぼ人と会えないことと植物をリンクさせてタイトルをつけています。日本画の仏画や天井画でみられるような木材に絵の部分のみ白をいれてから描いています。描いているのは八重の豪華な品種のチューリップです。花が重たくて垂れているのがすこし寂しそうにみえたのです。とてもとても豪華なのに。コロナで会えなくても心まで離れ離れにならず、気にかけるって大事ですよね。多くの人に個展に来ていただくと一年に一度会うだけでも繋がりは途絶えず、これなくても気にかけてくれてもらうと、いい絵を描こうと思えます。

短いスパンで展示したりなかなか時間がない中で、でも時間がないののも言い訳にしたくなくて意地になってクオリティをあげたり。

これを書いているのは29日ですが、搬出が終わったら、すこしお休みして力をためて、またお目にかかれたら。

また、WSはコロナのオミクロン株の流行によりギャラリーオーナーのお子さんの学級閉鎖などにともない中止となったこと、楽しみにされていた方には誠に申し訳有りませんでした。この場で謝罪いたします。

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